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青葉の笛伝説

青葉の笛伝説

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参照: http://www3.ocn.ne.jp/~mh23/heike223.htm

あらすじ
さる程に、一ノ谷の戦いに破れた平家の公達らが、沖の助け船目指して、ぞくぞくと、落ち延びて行きます。武蔵の国住人・熊谷次郎直実、”落ち行く平家勢の中の、あっ晴れ良い大将と組討ちせん”と、渚の小道を駆けていました。

 ふっと見ると、練貫に鶴をあしらった直垂に、萌葱匂の鎧着て、鍬形打ったる冑の緒を締め、金作の太刀を差して、24本入りの切斑の矢を背中に負い、滋藤の弓を小脇に抱えて、連銭蘆毛の馬に、金覆輪の鞍を置いて、これにうち乗った武者が一騎、沖の船を目指して、海にさっと打ち入れ、五,六段ばかり泳がせております。
 
 熊谷、「あれは如何に、よき大将軍と見受けたり。見苦しきかな、敵に後ろを見せるとは。返えさせ給えや」と、扇をあげて差し招きました。

 招かれた武者が取って返して、渚へ上がらんとする所へ、熊谷、波打ち際に馬を押し並べて、むんずと組むと、二人は二頭の馬の間にどっと落ちました。熊谷が武者を取って押さえて、その首掻かんと、甲を押し上げて見ますと、薄化粧して、鉄漿(おはぐろ)を付けた、我が子・小次郎の年頃にて、十五,六才ばかりの、容貌まことに美麗な若武者です。
 
 「そもそも、貴方様は、如何なる御方におはします。御名をお聞かせ下され。その命、御助け致そう」、と申しますと、
 「かく申す、そなたは誰そ」

 「物の数では有りませぬが、拙者は、武蔵の国の住人・熊谷次郎直実と申します」
 「そうか、ならば、そなたには名を名乗るまい。但し、そなたにとっては良き敵ぞ。名を名乗らずとも、この首取って人に問え、知らぬ者は有るまい」
 
 「天晴れなる、その物言い。これぞ真の大将軍におはします。この大将を討ち取ったとて、負ける戦さに勝てるはずも無し、また、御助け申したとしても、勝つべき戦さに負ける事は余もあらじ。今朝も、一の谷にて、我が子の小次郎が浅傷負うたのさえ、この直実、あれ程狼狽えたではないか。
 
 もし、若武者の父が、この子討たれたと聞けば、いかばかり、嘆き悲しむことであろう。よし、この命、お助け申そう」と、直実が心に決めて、後を振り返りますと、土肥実平・梶原景季ら、源氏勢五十数騎が出で来たりました。

 熊谷、涙をはらはらと流して、
 「あれを御覧なされ。貴方様を如何にもして、お助けせんと思いましたが、味方の軍勢雲霞(うんか・)のごとく満ち満ちて、とても御逃し申す事は叶いませぬ。この上は、同じ事なら、この直実が手に掛けて、貴方様の、その後の供養を仕りましょう」
 「ただ、如何様にも、早く、この首取れ」

 熊谷、余りのいとおしさに、振り上げた太刀を何処へ振り下ろして良いのやら、目もくらみ心も消え入りそうで、しばらくは前後不覚にとなっていましたが、何時までもそうしている訳にも参りません。泣く泣く首を掻き落としたのです。
 
 「ああ、弓矢取る身ほど、口惜しい事はなし。武芸の家に生まれなかったならば、かかる憂き目は見ずにいたものを。情け無う、首討ったるものかな」と、袖に顔を押し当てて、さめざめと泣いていました。

 その首を包まんとて、鎧直垂(よろいひたたれ)を解いて見ますと、錦の袋に入った笛が、若武者の腰に差してあります。
 
 「嗚呼、おいたわしや。この暁に、城の内にて管弦遊ばされていたのは、これらが御方達であったか。今、東国の勢は何万余騎居るが、戦さの陣へ笛を持ち来る者はまず居まい。公達の何と優さしい心根よ」

 その笛を、大将の源九郎義経にお見せして、若き公達の天晴れな最期を涙ながらに語りますと、回りの者皆、鎧の袖を絞らぬ者は居ませんでした。

 後に分かったことですが、この御方は修理太夫経盛の子・大夫敦盛と申して、今年17才になられたと言うことです。
 
  これよりしてこそ、熊谷次郎直実は、仏心を抱きました。
 
 無冠の太夫敦盛が、所持していた笛は、祖父の忠盛が鳥羽天皇から賜ったもので、父の経盛がそれを預かり、笛が名手の敦盛に持たせたもので、名を”小枝”(さえだ)と申します。
 
 狂言を見てさえ発心する人がいるとは申しながら、この笛が直実の出家の原因となったとは、何と哀れな話では有りませぬか

「音を伝える和邦人」 音生

しの笛総合サイト: http://shinobue-wako.neosailand.com/  

自然の音 そして和楽器 和太鼓 篠笛

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プロフィール

和邦人 音生

Author:和邦人 音生
プロフィール:杉浦音生 世田谷区下北沢で生まれる
天然石専門店 NEOS Ailand 経営 東久邇宮文化褒章受賞:2013年11月3日  東久邇宮記念賞 受賞:2014年4月18日 現在、与沢塾,熟生  希望日本の会,会員
篠笛講師 和太鼓講師 作詞作曲家 和歌作詞 ネットビジネス研究 ホームページ制作 英会話講師 電子技術者 静電気放電技術者 無線従事者 鉱石愛好家  地域・祭り常任理事 

東京電機大学   電気通信工学科専攻 5人兄弟の3男
中学卒業後 大手通信会社に入社 働きながら大学2部で学ぶ
大学卒業後 中野英会話学校、NOVAにて米語を学ぶ

15歳より電子計測器の組立作業に従事、その後検査→保守サービス業務に従事
昭和50年 米国のEHリサーチ社の社長Drハブスと出会い就職 26歳
昭和53年 半導体の電子計測装置の会社を設立 高速パルス技術に従事、保守サービス→製品開発を行なう
半導体のACパラメータ測定器を始め、超伝導工学での電子計測分野の開発業務に従事
超伝導工学研究所、富士通研究所、NTT研究所等研究機関の電子計測の提案、開発を行なう
半導体デバイスの静電気試験装置(ESDテスター,名称付け)を商用器として世界で最初に開発
半導体専門の大手会社、三菱、東芝。SONY, 沖電気 NTT、NEC、富士通、シャープ、その他
国内の主なメーカにこれを販売

静電気関連試験装置の開発、特許、論文を多数発表 米国でESDアソシエイションのワーキンググループに所属、ESD国際標準のためのメンバーとして、貢献(提案、データ取り、論文提出)
米国をはじめドイツ、中国、韓国、台湾等アジア圏にて展示会やデーラー教育を行なう
静電気放電の検出装置(ESDイベントディテクタ)を世界に先駆け研究開始、日本信頼性センター(RCJ)にて論文3回発表、国際ディスク協会(IDEMA)にて研究論文を発表する

半導体の静電気破壊試験器関連や静電気放電の検出法などの特許を多数出願
その後関連装置のプラズマ異常放電監視装置の開発に協力 国内主要メーカに納品。
平成16年よりHP制作に興味を持ち、ブログ→ドロップシッピング→NET販売などを独自で学ぶ。

ボランティア、社会貢献活動
地域の祭りのコーディネート(19年)組織に頼らない祭りの立ち上げ、和太鼓指導「舞鼓会、朝日流惺太鼓」(18年)、しの笛講師「しの笛竹の音会」(指導18年)等の普及を行なう。
しの笛は尾原昭夫先生に師事 地元子供会の会長を10年務めた経験を活かし、子ども達に、ふるさと意識向上と楽しみや思いで作りのため、子供神輿を製作。 
その後21年お祭りの度にお神輿の挙行を行ない現在に至る。近隣3町会を入れた楽しく意外性の有る祭り、来たくなる様な祭り、自主運営スタイルの祭りを企画、新しい形の祭りスタイルを構築する。
また春には桜祭りを企画、平成12年より毎年継続 太鼓、オカリナ、大正琴、コーラス、ピアノ演奏、読む会、バザーの等各団体が自主的に催しを行なえるようコーディネートを行なう。
現在では模擬店の出店等で徐々に評価を頂く。現在地元で祭囃子の演奏が出来るように囃子の稽古10年計画で行ない、現在6年目となる。
本年度平成25年から独自に、「舞鼓会、はやし連」を立ち上げ、地元に有った囃子の演奏を通し、親しまれて日本の芸能を継承できるよう研鑽中

また八王子の地域に貢献すべく「桑都太鼓連絡会」(7団体)を結成して定期的な打合せ、イベント企画 祭り参加を行なっている。
独自に毎年和太鼓フェスティバルを企画。無料の太鼓コンサートを実施している。
また、毎年秋の「八王子いちょう祭り」(常任理事16年)を務め、「来て観て触れる和太鼓お祭り広場」を企画、開催,全チーム参加して祭りに参加。八王子の歴史に残る和太鼓の演目と笛の演奏を和の文化、和芸や和楽器の素晴らしさを広めるための道場、発表の場である芸樂堂や教室などを設立、日本の音楽 日本の芸能、日本の踊り、日本の文化を世界に発表する機会を作るべく奮闘中

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